麻を巡る旅

あちらこちらから呼ばれているような

気がします。

 

静岡県の宿場も気になりますし・・

福島県の喜多方も気になりますし・・

京都の船宿あたりもきになりつつ・・

と雨の予報があった昨日、

「よし、日帰りで行けるところにしよう。」

と、栃木県へ行って来ました。

なんどか行っているので

だいぶ土地や道に慣れてきています。

ささっと行けるのが嬉しいですね。

人柄も良くていつも昔のお話を聴かせていただけるのも

嬉しいです。

 

麻を巡る旅です。

皆川城周辺や葛生地方、永野あたりでは

昭和40年代頃まで盛んに栽培されていました。

 

麻は成長が早く、人の背丈よりぐんと大きく育ちます。

麻の葉文様が古くからあります。

子供の産着に使われたり、

家の欄間などによく使われたりしていますね。

成長の早い麻になぞらえ

「子供の成長」

「家の成長と繁栄」

を願う気持ちから麻の葉文様は長く愛用されてきました。

最近では某スポーツメーカーもデザインに取り入れています。

 

 

皆川城下付近では

最盛期には一帯に生い茂った

麻のトンネルをくぐって学校へ通ったそうです。

かぐわしい匂いのせいか、

はたまた見渡す限り背の高い麻に囲まれていたせいか、

「とても幻想的だったよ」

と、にかっとされた笑顔が印象的でした。

あまりの意味深さにこちらも思わず苦笑いです。

 

収穫は手作業です。

『麻切包丁』と呼ばれる細長い刃の付いた道具を使います。

たくさんの人手でその包丁を手にして麻を刈り取ります。

 

4mはあろうかと思われる

木製だったり鉄製だったりした舟型のいれものに麻を入れて

煮出したり叩いたりしごいたりして繊維にします。

手間のかかる作業ですね。

煙突に使われていたものは

知らない人が見ると

大砲かしら?

と思うようなカタチをしています。

 

麻の皮状になったものはいくつか、何回か見たことがありますが

まだまだ糸になるには険しそうな『ほうとう』や『ぺらぺらうどん』のような状態です。

そこからまた糸にして

機を織り生地にするということで手間と時間がかかり、

高級品なのもうなずけます。

 

農家さんは

『あまや』という雨風をしのげて、いつでも農作業のできる場所を確保するための大きな建物を母屋の脇に拵えています。

母屋は小さくてもいいから

『あまや』は大きくとるらしいのですが

ほぼそこで作業をして過ごしているのと、

生活の糧になっているということで

生活の基盤のウェイトを占めているからそれもうなずけます。

 

現在では、麻の栽培をしているのは

鹿沼で献上手を作る方だけになってしまったようです。

 

栄枯盛衰は世の習い

 

と云われるとモノ哀しい雰囲気にも聴こえます。

厳しくなる要件が多くなってくると

「じゃあ、やめて違うことしようか」となるのは

世の常です。

 

ですが、

手仕事の良さや自然素材がいいと感じる人も増えつつあります。

担い手・引き継ぎ手も別の場所や別の世界から来る人もいます。

素材をいかしつつ

新しい目線でのモノつくりをする人もでてきています。

そうして広い意識で、遺伝子の羅列のようにつづいていくのですね。

 

おはなしを伺ううちに

一緒に時間と空間を旅しているような気分になります。

古道具屋さんならではでしょうか。

お話しを聴くのも嬉しい収穫と実りです。

 

今回出逢った方々、

一緒にいる時間と昔のおはなしを与えてくださり

ありがとうございました。

麻のようにぐんぐん成長しています。

 

筆 一月三舟

 

 

 

 

手間のかかる作業もいとまなく

探求心をこころに根ざして