旅先でのギフト

 あちこち飛び廻りはや一か月。

夢中になるというのは

こういうことか、

あちこちの夢や願いを運び

なんとか生き延びています。

 

庵野監督が

手に届きそうなところへ手を伸ばしているだけ

といったようなことを仰っていましたが、

その通りで

自分のできることを大げさでもなく謙虚過ぎずでもなく

していったらこうなった・・

 

古い道具を探し求めて

人との出逢いや会話を楽しみつつ過ごしています。

 

中には痛みが激しく重症でも

くすぶっている輝きが少しでも見えたら

連れてきます。

あちこち走ります。

風景も楽しみます。

 

先日、関東の山間部に行きました。

ふと、レストランのちいさな看板が目に入り

腕時計を見やると、ちょうど昼時です。

行き過ごしたのを戻りました。

 

坂道を少し下ると飾り気のない洋館が現れました。

苔むした煉瓦の塀が素敵です。

暖簾・幟旗・入り口はこちらなど余分な情報はなにひとつなく

ただ、静かに佇む建物。

人の気配がなくオープンしているのかも

『???』な感じでした。

でも、駐車場は満杯。中庭にも人はいない。

よけいに

『???』な感じでおそるおそる扉に近づくと

かっこいい感じ女の方がぱたぱた慌ただしく出て来ました。

『やっていますか?』

と聞くと

『やっています』とそそくさと建物の中に消えていきました。

『???』

飾り気のないただただ素敵な建物と同じで

飾り気のない方だなあ。と思いつつ中へ入ってみました。

 

中の奥の方では素敵なシンプルな葉物の寄せ植えの教室が開かれていました。人がいっぱい作業台を囲んでいます。

先ほど逢った方は教室の先生のようです。

ご自分で準備や生徒さんのお相手など切り盛りしているらしく

それで忙しそうだったのだなと納得しました。

 

静かな時間が流れる店内

余分な装飾はない。

あるのは適度に並べられたアンティークと、人が集まれる空間。

ここまで潔くそぎ落とされた感じもいいですね。

 

自分ではここまでシンプルにそぎ落とすことは出来ません。

やはり色々楽しんでいただきたくて

古いモノたちをそこかしこに置いておきたくなります。

かっこいい空間を眺めつつひとそれぞれだからな、と自分を肯定する技も身に付けました。

 

シンプルコーデを楽しみつつ食事も美味しくいただきました。

山猫軒に紛れ込んだかのような

不思議で素敵な洋館。

出先での面白い出逢い。こういったギフトがあるからやめられない。

新しい発見が楽しい。

 

 

その日はとっぷり日が暮れるまでの作業となり

帰宅が遅くなったので途中でチェーンの廻るお寿司屋さんへ立ち寄りました。

隣のカウンターに座っていた小学生くらいの男の子に

物珍しそうに見られました。

なんと、被っていた帽子に蜘蛛の巣がたくさんくっついています。

まるで冒険家。

 

ちょっぴり恥ずかしくなって埃が飛ばないように

静かに帽子を丸めました。

 

子供の瞳にはどういう風に映ったのでしょう。

不思議に映ったのでしょうか。

 

筆 一月三舟